カランカラン。
いつもの鈴の音を響かせながらお店の扉を開けると、聞こえてきたのはマスターの声だけだった。
「いらっしゃい」
「こんにちは」
マスターに笑顔を向けて、いつものカウンター席に座る。
キョロキョロとしてみるけど、どうやら大志くんはいないみたい。
……残念。
「今日は大志くん、いないですね」
「まさか実句ちゃんも大志ファンになっちゃったとか言わないよね!?」
マスターがわざとらしく目を大きく見開いたので、その顔に笑ってしまった。
「ところで実句ちゃん」
マスターがミルクティーを出してくれながら、急に真面目な顔をする。
「は、はい?」

