掴む力が弱まり、手首がするりと抜ける。 「…つ、ばさ……?」 「ちがっ、違うのっ!」 「…俺が悪かった。ごめん」 悪くない。悪くないよ。 「どうして翼は、全部自分のせいにするんだよ。 痛みは翼だけが抱えるものじゃないだろ…」 「……亮君、痛みはね、分かち合えるものじゃないんだよ。 亮君には亮君の痛みがあるの。 あたしにはあたしの痛みがあるの。 誰とも分かち合えることのできない痛みなの」