「どうして翼が謝るんだよ…。これじゃあ、いつまで経っても翼を傷つけ続けてるのは俺じゃんか…」
「…あたし、こんなこと知らなくて…苦しくて、もう…耐えられそうに、…ないや……」
気がつくとあたしは、すっかり暗くなった草原を力一杯走り、水沢家に駆け込んでいた。
「翼!?」
香子さんの慌てた声。
「香子さん、…あたし、もう無理だよぉ。まだまだあたし…、弱かった…」
言い終わると全身の力がフッと抜けてぺたんと床についてしまった。
「事故のこと、きいたのね…。その本当の原因も……」
暖かい手があたしの肩を包む。
お母さん…、会いたいよ。
いくら思ったって会えない。
名前を呼んでも返ってなんてこない。
そんなことわかってる。
わかってるけど、やっぱり会いたいよ、お母さん。
次の日、あたしは学校を休んだ。
その次の日も。
そのまた次の日も。
あたしは、学校で亮君と顔を会わせることができない。
あたしたちは遺族と加害者の息子の関係。
あの日からはもう、出会わなくてよかった存在。
この4年間も別々に苦しむことなんてなかったのに。

