「亮君は、親のためにあたしを利用したんだね…」
「……違う、違う、違うんだよ、翼。あの事故はそんなに簡単な結末じゃないんだ…」
苦しそうに声をだし、ゆっくりと顔をあげる。
笑っているところしか見ない亮君の泣き顔を初めて見た。
「あの事故はな、父さんのせいじゃない。…俺のせいなんだ…」
胸が熱くなって静かに涙がこぼれた。
「亮君のせいって…何?」
「運転していたのは確かに父さんだよ。でも…、原因をつくったのは俺なんだ。…あの日、俺が父さんの視界を狂わせた……。風船、しっかり持ってろって言われたのに…手ぇ離した。だから父さんの目の前に風船が…気づいたら車に……」
震える両手をぐっと握りしめてまたうつむく亮君。
「俺、こっそりお葬式行ったんだ。そこで初めて翼に会った。そしたらよ、翼が『絶対に許さない』そう言ったんだよ…。俺のこと見て、そう言った」
「嘘…、あたし覚えてないよ…」
「その頃から翼のことしか考えられなくなってあの言葉も消えないままだ」
亮君の背負ったものはあたしをはるかに越える重さ。
この4年間重りに耐えたのはあたしだけじゃなく、亮君もだったんだ。
「ごめん、なさい…」

