「ありがとう」

亮君のあの言葉がどんな意味を持つかもわからずに…。


本当の嵐はここから勢力を増し、心を一瞬にしてぐちゃぐちゃにしてしまうんだ。



本当の意味はあたしの知らないところで渦をまく。

それは、見た目は蝶のようにヒラヒラと舞う。

見た目だけは…。


―――――――――


学校に慣れてから約3ヶ月が経った。


クラスのみんなも話しかけてくれるようにはなって、亮君のあの話も忘れようとした。


なのに、また思い出しちゃうんだね。


あの夜、お母さんに話した出来事。



―――――――――


深夜0時、ふいに目が覚めてきしむ階段を降りる。


「陽子姉さん、まだみたいよ…」



香子さんのお母さんに似た穏やかな声。

そっと耳をたてた。


「陽子姉さん、この前翼ちゃんがね、風見亮君って子と仲良くなったって言ってたわ。…びっくりした、あの風見さんのに間違いないと思うの。
…早くてね、もう3ヶ月も経ったの。それなのに…、翼ちゃんの本当の笑顔はまだ…戻らない…!」