静かな廊下を音をたてずに歩いた。



お母さんの育った家だから戻ってきた。

ただそれだけ。



本当は叔母さんのいる家になんか帰ってきたくない、でもお母さんがいるから、ただただお母さんが恋しくなった。

だから帰ってきたの……。



亮君だって一度はあたしに光を見せてくれたんだと思った、でもそれは一瞬でとてもはかなくて、7日間の命のセミと小さな光を一瞬だけ灯す蛍のように。



亮君が悪いわけじゃない。

あたしが過去から逃げた。

逃げなきゃ壊れてしまうような気がしたから――。