聞こえるのは、セミの声と、車のエンジン音。 両手には、旅行鞄。 前に見えるのは、バス停の時刻表 …あと10分か。 バス停の椅子に腰かけ、バスを待つ。 あの後。 いろいろあった。 お葬式、お通夜。 でも、出れなかった。 そこで、お別れをしたら、優くんが、わたしを忘れてしまう。 そう、思った。 そう、思ってしまったんだ。 優くんはいない。 この世界にはいない。 それなのに。 わたしの横で、いつも、微笑んでいてくれる気がした。