何分煙草の痛みに耐えただろうか。あたしは目を覚ました。気付けば自分の部屋のベッドで寝かされていた。楓は居なかった。

 「痛ってぇ……」

 火傷の痛みがまだ残っている。気を失ってしまっていたのだろうか。でも一体誰が此処まで運んでくれたのだ?
 すると扉が開いた。

 「あ、気が付いた?」

 姉だった。あたしは姉が帰って来たのだと知って安心した。姉は扉を閉め、持っていたタオルを水に浸けた。あたしは姉に訊いた。

 「あたし、どんな状況だった?」

 姉は一瞬手を止めたがまた動かし苦笑しながら言った。

 「……私が帰って来た時は倒れてたよ。お母さんも居なかった。桐の事運んでる途中で上から下りて来た楓に会ったよ」
 「楓、如何だった?」
 「心配してたよ」

 ――嘘だ。そんな事嘘だと分かっている。あの非道な奴が自分以外の人間の心配なんてする筈ない。姉は優しいからそんな嘘を吐くのだ。

 「……そっか。心配掛けたな」

 姉は返事をせず、「背中出して」と短く言った。あたしは姉の方へ背を向け、背中の衣類を上へと上げた。

 「うわ……酷いね」

 姉はそう呟き、冷やしたタオルをそっとあたしの背中に触れさせた。途端、激痛が走る。

 「いっ……!!」
 「わっ!! ごめん、痛かった!? 大丈夫!? ごめんね!」

 姉は直ぐにパッとタオルを離した。あたしは溜め息を吐いて言った。

 「大丈夫だから。多少痛いけど、続けて」

 姉は遠慮がちに優しくタオルで拭いてくれた。



 あたしん家は狂ってる。花音姉さん以外は。