桐 12歳



 「おはよっ桐っ!!」
 「おはよー朋ちゃん」

 後ろからぽん、と軽く肩を叩かれた。振り返ると親友の朋ちゃんがにこにこ笑っていた。あたしはのん気に笑って返事を返した。
 朋ちゃんはあたしの横まで来て溜め息を吐いて言った。

 「あーあ。今日漢字テストだよね? 桐は頭いーから良いなあ。あたしなんていっつも補習でさー」
 「え? あたしあんまり頭良くないよ? 朋ちゃんの方がいーくせにー」

 お互いに謙遜し合って笑い合う。
 当時のあたしは12歳の中学一年生。新しい中学校生活にも慣れ始め、朋ちゃんと言う大切な友達も出来た。満足だった。凄く幸せだった。
 それから二人でゆっくり学校までの道のりを歩いた。


 「はよ。岡咲」
 「あ、うん。お早う飯島くん」

 教室へ入り、席へと荷物を下ろすと真っ先に前の席に座って居た飯島くんが挨拶をしてくれた。飯島くんは小学校が違って中学に入ってからの友達だが結構仲は良い。

 「きーいっ、おはよおっ!!」

 次に飯島くんの隣の席に座っている玲が挨拶をしてくれた。

 「おはよー、玲」

 玲は中学一年生にしては背も高くて大人っぽく、少し今時のギャル風のお洒落な女の子だ。小麦色に焼けた褐色の肌に笑うと見える真っ白な八重歯が可愛かった。

 玲はそれから微笑を洩らすと飯島くんと親しげに話し始めた。
 他人が見てもきっと直ぐ分かる。玲は飯島くんが好きなのだ。顔が格好良くて超好み。背も高いし性格も素敵。あたしはいつも玲にそう飯島くんの事を聞かされていた。

 確かに飯島くんはそこら辺の男子よりは格好良い。背もしゅっとして高いし、顔立ちも整っているし、性格も良くておまけに秀才だ。告白される率も高いんじゃないかなあ、って思う。

 でも傍から見ると玲と飯島くんってお似合いなんだなあ、これが。