「麻実と初めて会ったのは6年前。
俺が高校を卒業してすぐ…18の時だった」

「え…18、歳…?」


…驚くのは当然、か。
今から6年前。俺は18で麻実は11歳。
その時に俺たちは出会ったんだ。


「…単刀直入に言うよ。
俺と麻実は異父兄妹。だから俺たちは会っていたんだ」


俺たちは、兄妹。
麻実は俺を捨てた母親から生まれた子供…。


「6年前、“母親”と名乗る人からの手紙が来た。
会って話がしたい。って書いてあって、日時と場所が指定されていた。
俺はね、もしそれが本当に母親なら…殴ってやろうと思った。だから行ったんだ」


俺を捨てた母親。それが今更「会いたい」だなんて都合が良すぎる。
だから…母親を殴り飛ばして「もう二度と会わない」と言おうと思った。

だけどその日その場所に来たのは、母親と幼い子供。


「…今とは全く違う麻実。
眼鏡をかけていて、俺のことを見て怯えた顔してた」


懐かしく思い遠くを見つめる。
そんな俺に何か言いたそうにした良明くんだったけれど、結局何も言わずに目を伏せた。


「…俺たちの関係は、美和やキミが思ってたものとは違うんだ。
本当はもう少し後に話すつもりだったんだよ」


今はまだ早すぎる。だからもう少し、もう少しだけ時間が欲しかった。
そんな考えが、美和を傷つけてしまったんだ…。


「正直、残念です」

「え…?」


良明くんは柔らかい笑顔で俺を見た。


「冬馬さんたちが恋人同士なら、俺は美和ちゃんとやり直せるチャンスがあった。
それが今はもう無くなったから、残念です」


全てを悟った顔。俺の想いを知った顔。
良明くんは立ち上がり、それからまた笑う。


「だけど、美和ちゃんにとって二人は大切な人だから…付き合ってなくて良かったと思ってます。
俺、麻実のとこ行ってますね。美和ちゃんをお願いします」


良明くんは軽く頭を下げ、病室を出て行った。
そしてそのすぐ後、美和が微かに動き、目を開く。