――……。


街に着くと良明くんは手を離し、少し前を歩く。
私たちは恋人同士ではない。良明くんの行動はそれを象徴している。


「…ねぇ美和ちゃん。
もし今…冬馬さんたちに会ったらどうする?」

「え?」


通りを渡ろうと信号待ちをしていた時。
良明くんは振り返り、それから目で促す。


(あ…)


その先に何があるのかを知る。
通りの向こう側、同じように信号待ちをしている人の中に…冬馬兄ちゃんが居た。
その隣には麻実ちゃんが居て、何かを、楽しそうに話してる。


(やっぱり、怖い)


二人が一緒に居て笑っているなんて、夢であって欲しかった。
だけどこれは現実で、通りの向こうには二人が居て…笑ってる。

楽しそうに話してる二人に声をかけるなんて出来ないし、したくない。
事実を知るのが怖い。


「嘘であって欲しかったと思ってる」


良明くんは言い、それから携帯を取り出す。
いくつかのボタンを素早く押し、そしてもう一度私を見た。


「ケリをつけようか」


その言葉と同時に最後のボタンを押す。
電波は通りの向こうに居る麻実ちゃんへと飛び、そして麻実ちゃんがそれに気付いて携帯を開く。


「“美和に何かしたら殺す”とか俺に言っといて、お前は何してんだよ?」


携帯を耳に当てた良明くんはどこか冷たく言い放った。