気兼ねなく話している二人。
二人は顔を見合わせて、それからお互いを指差した。


「「誰がこんな奴と…」」


と、二人同時のセリフ。
もう一度お互いに顔を見合わせた。


「…とにかく!私はこいつが嫌いなの」

「…俺だってこんな厚化粧ババァ好きじゃねーよ」


またお互いに指を差し、二人は少し苛立ったように私を見た。


「えっと…二人は仲が悪い、のね?」


そう言ったら麻実ちゃんは満足そうに頷き、良明くんは少し不満そうな顔をした。


「…まぁ、いいけどさ。
で、やっぱりやり直すのは無し?」


良明くんの真剣な顔と言葉。だけど私は、それには応えられない。


「ごめん、ね。やっぱりそれは…無理、かな…」

「…そっか。まぁそうだよね」


私が断るのを知っていた。だけど声をかけてきた。
良明くんはまた優しい顔で笑い、それから後ろのポケットをゴソゴソと探る。

そして出てきたのは…イチゴ牛乳。


「美和ちゃんにあげる。
あ、ちゃんと冷えてるから安心してね」


私にウィンクした後、麻実ちゃんにはベッと舌を出して教室を出て行った。


「なんっで私のはぬるくて美和には冷えてるやつなのよ」


怒ったような顔で良明くんを見送った麻実ちゃん。
だけどそれ以上の文句は言わず、ぬるいイチゴ牛乳を最後まで飲みきった。


(…麻実ちゃん、言うほど良明くんのこと嫌ってないみたい)


ほんとに嫌いだったら絶対飲まないよね、ぬるいイチゴ牛乳なんて。

“喧嘩するほど仲が良い。”

二人はきっとそれなんだと思った。