突然抱き寄せられて、前よりもグッと距離が縮まる。


「冬馬兄…ちゃん?」

「美和が良いバイト見つけられるように、おまじない」


冬馬兄ちゃんを見たその時、おでこにチュッとキスされた。
それは、おまじない。
私と冬馬兄ちゃんだけの、おまじない。


「…小学生の時以来だね」


なんとか平常心を保ち、笑いかける。
ギュッと抱き締められた後のおでこにキス。最後にされたのは、小学校4年生の頃だったかな。

その頃の私は、もう冬馬兄ちゃんのことが好きで…抱き締められたりキスされたりすることが凄く恥ずかしくて、冬馬兄ちゃんを避けていた。

冬馬兄ちゃんは妹みたいな私を元気づける為にしてたんだろうけど…私はもう恋してたんだ。


「俺のおまじないは効くだろ?」


昔から変わらない優しい笑顔。
いつも私を心配してくれて、そして勇気づけてくれる冬馬兄ちゃん。


「…ありがとう。きっと良いバイト見つかると思う」


そんなお兄ちゃんに応えるように、精一杯の笑顔で返事をした。