「…なんだか上手くいかない」
ポツリ冬馬兄ちゃんが呟いた。
髪の毛をかき上げるその顔は少し苛立ってる…ような。
「どうかしたの…?」
どうしてそんな顔してるのかわからない。
私、何か変なこと言ったかな?
…だけど冬馬兄ちゃんは答えない。
私の顔を見ることなく、いつものように頭を撫でてくれることもなく…車を走らせる。
――……。
もうすぐ家に着く。知っている道に出たからそれがわかった。
相変わらず冬馬兄ちゃんは何も言わない。
だから私も言葉が出せなかった。
(何か言ってくれたらいいのになぁ)
ふぅ、と吐いたため息に応えるように冬馬兄ちゃんが私の手を掴む。
「ずっと、言おうと思ってた」



