…すっかり暗くなった空と、光を増す街。
だから冬馬兄ちゃんは私に声をかける。
「そろそろ帰ろうか」
聞きたくなかったその言葉。だけど受け入れなくちゃいけない。
明日は月曜日。冬馬兄ちゃんは仕事があって、私は学校がある。
「…迷惑かけてごめんね」
そう言った私に冬馬兄ちゃんは首を横に振った。
「美和が思ってるほど俺は迷惑だなんて感じてない。
今日、一緒に居られて楽しかった。だから…」
だから。
その言葉の続きは、
何?
「………」
でも、いつまで経っても言葉は繋がらない。
冬馬兄ちゃんは私を見たまま固まってしまった。
「冬馬兄ちゃん?」
「あ…いや、だから…」
困ったような顔で目を逸らした冬馬兄ちゃん。
同時に行った、私の頭を撫でる仕草もなんだかぎこちない。
「…明日、報告待ってる」
「あ、うん…わかった」
それが言いたかったことなのかな?
冬馬兄ちゃんはそのまま先に車に入っていった。
だから私もそれに続き車に入ることにした。



