…良明くんはミキさんの言葉に何も言わない。だからそれが事実なんだと知る。


「ねぇ、二人は恋人?年の差カップル?」


無邪気で興味津々なミキさんの笑顔。
私は言葉を出すことが出来なくて、ただ呆然とそこに居た。


「…悪いんだけど、俺たちそろそろ帰るよ」


冬馬兄ちゃんの言葉にミキさんは席を退き、良明くんも立ち上がった。
伝票を持ち、テーブルに一万円札を置く冬馬兄ちゃん。


「悪いね、話が出来なくて。
これで好きなの食べてね」


優しい笑顔。だけどそれは、本当の笑顔じゃない作り物の笑顔…。
それに気付いているのは私と、良明くん…ミキさんは嬉しそうに挨拶をしているだけだ。

私の手を掴んだ冬馬兄ちゃんは、少し強い力で歩き出す。


「美和ちゃん…明日、話そう」


良明くんの声を後ろに聞きながら、ファミレスを出た。


――……。