まさか…冬馬兄ちゃん…?

ドキドキしながら、慌ててドアを開けたけど…冬馬兄ちゃんが居るわけがない。
私の慌てた顔を見て、お母さんが驚いた顔をした。


「どうしたの、そんな顔して」

「…なんでもない。お母さんこそどうしたの?」

「今ね、麻実ちゃんと良明くんが来たんだよ」


麻実ちゃんたち?
今は夜8時…こんな時間にどうしたんだろう。
玄関へ向かうと、二人が笑顔で手を振った。


「ごめんね、こんな時間に。
どうしても直接話したくて」

「どうしたの?何かあった?」


二人を自室へ招き入れ、冬馬兄ちゃんからのプレゼントに蓋をする。


「まずは、お誕生日おめでとう」


それぞれからプレゼントを貰って、「ありがとう」と言葉を返す。
でも、プレゼントを渡しに来たのは多分“ついで”だ。

麻実ちゃんは良明くんの顔を数秒見つめた後、私に向き直る。


「私ね、旅館で働くことにしたの」

「あー伯父さんが経営してる旅館!
そっかぁ。じゃあ若女将だね」

「そうなるのはまだまだ先だけどね」


それから、また良明くんを見た。
そこでようやく、私を見た良明くんが話し始める。


「実は、俺も旅館で働くことになった。
一週間前、麻実にプロポーズしたんだ」


麻実ちゃんの左手の薬指で指輪が輝いている。


「そっかぁ…麻実ちゃん、良明くん、おめでとう!」


幸せそうにする二人。
大好きな二人が、結婚する。
本当に本当に嬉しかった。


「二人共、旅館に行っちゃうのかぁ…あんまり会えなくなっちゃうね」


少し寂しいけれど、二人の幸せな時間を邪魔する権利なんて私には無い。
遠く離れても私たちはずっと友達。だから大丈夫。


「式には必ず呼んでね」

「勿論!美和が居なきゃ絶対ダメだよ。
私たち、ずっとずっと友達だもん」


幸せそうな麻実ちゃんの笑顔は凄く綺麗で、目が離せなくなる。
元々美人さんだけど、幸せそうな麻実ちゃんは本当に綺麗だった。