冬馬兄ちゃんはリビングにあるソファーに座ってお酒を飲んでる。
テーブルには、スーパーで買ってきた安いお弁当とおつまみ。


「…ちゃんとご飯作んなきゃダメだよ?」


平静を装い、隣に座る。
いつもと変わらない美和でいなきゃ…と、よくわからない緊張。
ドキドキが聞こえてしまいそうなくらい、私たちは近い場所に居る。


「一人だと、やっぱり買った方が楽なんだよね。
オヤジは帰ってくるの遅いし」


冬馬兄ちゃんのお父さんはいつも仕事で居ない。
昔、何回か会ったけど…最近は全然その姿を見ていない。

そうすると、冬馬兄ちゃんはいつも一人。
食事は作るより買った方が楽…って言うの、なんとなくわかる。


「あの、ウチに食べにおいでよ。
お父さんもお母さんも、喜ぶからさ」


冬馬兄ちゃんを本当の息子のように可愛がってるウチの親。
ご飯くらい、いつでも食べに来ていいのに。

…けど、冬馬兄ちゃんは微笑むように笑って言った。


「迷惑かけたくないんだよ」


ズキン、と心が痛む。