綺麗に染められた茶色い髪は、ふんわりと柔らかくていつまでも撫でていたいと思ってしまう。


「凄く、柔らかいね」

「そう?結構パサついてると思うけど」

「ううん、そんなことないよ」


本当に、柔らかくて綺麗な髪。
私の方がパサついてる感じだからちょっと羨ましい…。


「いいなぁ。綺麗な髪って羨ましいよ」


いつまでもいつまでも撫でていたくなる。
だけど、ずっと触っていたら変に思われそうだったから手を離した。


「ごめんね、急に変な話しちゃって」

「ううん、平気」


姿勢を戻した良明くんが笑いながら言葉を続ける。


「なんか恥ずかしい感じだったけど、俺は撫でられるの嫌いじゃないよ。
あったかくて、凄く気持ち良かった」


優しい顔で答えてくれた良明くんは歩き出し、それに遅れないようにと私も歩き、隣に並ぶ。


「でも、やっぱり撫でる側の方がいいなぁ。
その方が凄く楽」


靴を履き替える時、そんな風に苦笑した顔がどこか印象的だった。




…二人で並んで帰る。それは、付き合ってた時以来。
その時は途中まで一緒で、後は一人で家に帰っていたけれど…今は家の前まで良明くんが一緒に居てくれる。


「ごめんね、迷惑かけちゃって」


そう言う私に良明くんは「大丈夫だよ」と笑うだけだった。