「おはよーさん」


良明くんは今日も眼鏡をかけていて、帽子を深くかぶっている。


「…遊園地、眼鏡で平気?」

「んー?まぁ大丈夫じゃない?」


絶叫マシンに乗ったら眼鏡が飛ばされそう…と私は思ったけれど、良明くんは楽観的に笑うだけだった。
それぞれ切符を買い、電車に乗る。


「隣町っては言うけれど、外れにあるから結構遠いよね」


麻実ちゃんが眠たそうにあくびをした。
だけど、ドアに寄りかかる良明くんはそんな麻実ちゃんを見て笑う。


「でも楽しみじゃん?ねぇ、冬馬さん?」

「え?あーそうだね。
年甲斐もなく今日を楽しみにしてたよ」

「いやいや年甲斐って。冬馬さん、なんかオヤジクサい」


…冬馬兄ちゃんと話す良明くんは本当に楽しそうで、それにつられて私たちも笑顔になる。
年の差はあるけれど、冬馬兄ちゃんも楽しそうな顔でそこに居る。


しばらく電車に揺られ、ようやく降りる駅に着いた。
遊園地まで徒歩数分の場所にある駅はやっぱり混雑している。


「…こりゃあ、待ち時間長くなりそうだね」


…冬馬兄ちゃんの言葉通り、遊園地内はどこも混雑していて、開園してまだ30分も経っていないのに既にあちこちで列が出来ていた。


「さて、とりあえずどうする?
って…二人どこ行った?」

「え、あれ?さっきまでここに…」


チケットを出す時は一緒に居た麻実ちゃんと良明くん。
私の後ろに居たはずの二人が、居ない。