静かな部屋。
遠くではシャワーの音がする。

何度も来ている家なのに、今日はなんだか落ち着かない。

冬馬兄ちゃんがシャワーを浴びているから?
久々に会って緊張しているから?
それとも、やっぱりまだ「過去」が気になるから…?

…よくわからないけれど、なんだかいつも以上にドキドキしている。


――水の音が、止まる。
それから数分して、私服を着た冬馬兄ちゃんが戻ってきた。


「さて、行こうか」

「あ…うん」


いつもの冬馬兄ちゃん。
寝起きの、まだ眠たそうな顔はもう無い。

リビングを抜け、玄関で靴を履いた時…冬馬兄ちゃんが私の手を引いた。


「キスしていい?」

「えっ…あ…」


…答える暇もなく、あっさりと唇を奪われてしまった。


「外じゃ出来ないだろ?」


意地悪そうに笑う冬馬兄ちゃん。
私、多分顔真っ赤…。
上手く返事が出来ないまま、外に出る。

とにかく…麻実ちゃんたちと会うまでには気持ちを落ち着かせなきゃ。

早歩きする私の2歩後ろをぴったり歩く冬馬兄ちゃん。
後ろから冬馬兄ちゃんの視線を感じる…。


「…あ、二人とも来てるよ!」


その視線から抜け出したのは、駅前で待つ麻実ちゃんたちを見つけた時だ。
二人が私たちを見つけて手を振る。