私以外には誰も居ない部屋。
凄く広い部屋。
男の子の、部屋…。

さっきまでは感じていなかった緊張が体を包み込む。
僅かに残っていた冷めた紅茶を一気に口へと入れ、ごくんと飲み込んだ。


(…ちょっとくらい、触っても平気かな)


ゆっくりと立ち上がり、本棚に触れる。
ぎっしりと詰まった本棚の半分は参考書。もう半分は漫画本みたい。
参考書がこんなにあるなんて、少し意外。

良明くんはおちゃらけたイメージが強い。けど、眼鏡をかけた良明くんは秀才に見える。
…どっちが本当の良明くんなんだろう?


手に取った参考書をパラパラと捲り、それからふと机の上を見た時、
伏せられた写真立てに気が付いた。


(…写真?誰の?)


良明くんのプライベート。それを勝手に見るなんて。
そう頭ではわかってる。だけど手はゆっくりとそれに触れ、そして――。


「――何やってんの?」

「ひゃっ!?」


…中を見ようとした時。
ドアのところに立つ良明くんと目が合った。