体を起こしてそちらを見ると、冬馬兄ちゃんは心配そうな顔をしている。
どうしてそんな顔をしたのか、数秒後に気付く。

私、泣いていた。


「何かあった?」


優しい声。いつもと変わらない冬馬兄ちゃん…。
だけど私は、上手く話すことが出来なかった。

そんな私を見て冬馬兄ちゃんは少し考え、それから優しく頭を撫でた。


「全部聞いた?良明くんのことや、俺たちのことも」

「…うん」

「そっか」


それ以上は何も言わずそっと私の横に座る。
冬馬兄ちゃんはまだ何かを考えているようで、どこか一点を見つめたまま動かない。

その間に涙を拭い、静かに呼吸を整えた。


「ごめんね、ちょっとビックリしちゃって。
麻実ちゃんと冬馬兄ちゃん全然似てないのにね」


なんとか笑ってみせると、冬馬兄ちゃんも小さく笑った。


「麻実は…結構無理してる。だから多分、似てないと感じるんだよ」


麻実ちゃんが、無理してる?
…その意味がよくわからない。
だけど、私よりももっといっぱい麻実ちゃんを知っているから…冬馬兄ちゃんの言葉はきっと当たってる。


(私が知ってるのはホントの麻実ちゃんじゃないのかな?)


黙ったままの私に冬馬兄ちゃんは微笑み、それからゆっくりと口を動かす。


「美和に言っておきたいことがある。大事な話だよ」


隣に座る冬馬兄ちゃんは少しだけ強く私の手を握った。