……。


あの日、私たちが一緒に居るところを、笑い合ってるところを美和は見た。
もし、もっと早くに話していれば美和は傷を作らずに済んだはず。
私がもっと早くに話していれば…。


「…ごめん。ずっと、言おうと思ってたんだ。
だけど冬馬さんが“まだ言う時じゃない”って言ってたんだ。
だから私は、“その時”を待っていた」


こんなことになるなら言えば良かった。
言っておけば良かった。
…今は、後悔ばかりを感じている。


「…本当なの?」

「うん。母親が同じだから間違うはず無いよ」


私の言葉を聞いた美和は少し考えた後、先程と同じように小さく笑った。


「なんだか変な気持ち。
でも良かった。冬馬兄ちゃんと麻実ちゃんが付き合っていたら…私、壊れちゃってたかも」


静かに放たれた言葉を私は全身で受け止める。
上手く言葉が出せなくて、ただ美和を見つめた。


「あの日…私が勝手に逃げ出したんだよね?
だから麻実ちゃんは悪くないよ。私に話してくれようとしてたんだもん」


逃げ出したのは自分だから、と私に言った。


「麻実ちゃん、ごめんね」


その時美和は、私を静かに抱き締めた。
美和が、私のことを許してくれた瞬間だった。