……。


それから私たちは電車に乗り、色々な話をした。
今までもたくさんの話をしてきたけれど、それ以上にたくさん話した気がする。
…良明の知らなかった部分、それをたくさん知った夏…。

間もなく降りる駅。という時に、良明が私の手を握ってきた。


「よっしゃ、気合い入れてくべ」

「あ、うん…」


突然のぬくもりに戸惑う私を見て、良明は笑う。
いつも通りの笑顔だから私もなんとか笑うんだけど…なんだか上手くいかない。
ドキドキが止まらない。こんなこと、今までは無かったのに。


――良明と、ずっと手を繋いでいたい。


今私は、そう思っている。


「麻実」

「えっ…?」


名前を呼ばれて、その顔を見る。


「俺、お前と過ごせて楽しかった。
遊ぶ時間は無かったけど、たくさんの人と知り合えたことを嬉しく思う。
ほんと、ありがとう」


一瞬強く握られた手。だけどすぐにそれは弱められ、そして離される。


「…これからは宿題の毎日だね」

「あ、そう言えばそうだな。すっかり忘れてた」


苦笑気味に笑う良明に私も笑顔を返し、ちょうど着いた駅で降りる。
離れてしまった手と手。少しだけ寂しさを感じながら歩き出す。