――……。


そして、バイトを終える日が来た。
イヤなこともあったけど、充実した毎日だった。
今日、久々に美和と会うんだ…。
なんだか緊張してしまう。


「麻実ちゃん、良明くん、お疲れ様!」


伯父さんと伯母さん、それに如月さんが玄関で見送ってくれる。


「良明くんとずっと同じ部屋だったのに、ほんとに何も無かったの?」


コソッと聞いてくる伯母さん。なんだか楽しそう。


「何も無いってばー」


そう返すとつまらなそうな顔をする。
…何かあった方が良かったような顔。


「いまどき珍しいよね、何もしてこない子だなんて」

「…良明は私になんて興味無いし」

「そうかなぁ。二人とも良い仲だと思うけど」


残念そうな顔。だけど次には、目をキラキラと輝かせて聞いてくる。


「じゃあ気を取り直して…“あの話”、考えといてね!」


…そうだった。
2日前、伯母さんが「話がある」と私を呼んだ。

「でも“あの話”は…私だけじゃ決められないよ」

「今すぐってわけじゃないのよ、だからゆっくり考えといて?」


あの場では断りきれなかった話。そして、今も…。


「何、なんの話?」


…良明が私たちの間に入り、会話を邪魔する。
伯母さんは「なんでもないのよ」と笑って手を振った。
だから結局、上手く話せないままお別れになってしまった。


「麻実ちゃん、またよろしく頼むよ」

「あ…はい。ありがとうございました」


如月さんは相変わらずの優しい顔で笑い、私たちに手を振った。