――……。


それから数日。
良明は毎日笑顔で仕事をこなしている。
大きな変化は無い…ように見える。

私との会話も今まで通り。むしろ、私の方が上手く話せていない。
だけど良明は私の態度なんて気にせずに話している。
いつも通りの、馬鹿ばっかり言ってる良明。それに変わりはない。


――そして更に数日。
8月も半ばに近づき、バイトもあと数日で終わるという時…冬馬さんから電話があった。

その日の仕事を終え、ようやく部屋に戻ってきた時に、着信があったことを知る。
時間はだいぶ遅いけど、電話をかけることにした。


「良明…ごめん、少し電話するけどいい?」


襖越しに問うと小さな返事がした。それを合図にすぐ履歴から電話をかける。
数回のコールの後、冬馬さんの声を久々に聞く。


『もしもし、麻実?疲れてる時に悪いね』

「…ううん、大丈夫。どうかした?」


冬馬さんが電話をかけてくるなんて今までに無かった。
今まではずっとメールだけのやり取り。それが突然の、電話。

もしかしたら…美和に何かあった…?
そう思った。


『美和の記憶のことなんだけど、ほとんどは思い出したんだ。
だけどね、事故に遭う数日前からの記憶がすっぽり抜けてるみたいなんだ』

「…数日間の記憶が無い?」

『うん。で、結構ややこしいことになってる』