知り合いの子?なんだか微妙な言い方だと都は思った。

「怪我・・・骨折とか」

都の呟きか問い掛けか分からない言葉に対して、夏井も曖昧な返事をした。

「いや、そうではなくて。・・・私もよくは知らないんだけど、生れつきの病気らしくて、小さい頃から入退院を繰り返していたんだって。今までは東京の病院にいたのが、何かの事情で移ってきたそうよ」

何かの事情。
よく分からないけど漠然とよくないことだろうと思った。
ここは地方の市立病院で、規模は大きいが特に最新の技術が使えるという訳ではない。わざわざ移ってきたとなれば、それは治る見込みがない、ということなのだろうか。

「篠田さんも会ってみる?高校生だって言ってたから、同じ年頃の篠田さんが行ったら喜ぶんじゃないかしら」

夏井はそう言ったが、都は断った。そんな病弱な子、偏見かもしれないけどなんだか無口で話しにくそうだ。
だいたい何を話せば良いものか、学校の話などしたら嫌味になりそうで面倒臭い。

そう、と夏井は言った。
特に残念そうでもなかった。


「先生戻って来ないみたいだし、私、帰ろうかな。今日は本を返しにきただけなので」