「あの子ね、事故に遭ったのよ」

そう言うとおばさんは力なく笑った。

「それであの子…今までの記憶失っちゃったの」

おばさんは母さんが用意したお茶の残りを一気に飲み干した。

「そうだったんですか…」
「でも、翔太君気づいたの早かったのね」
「あの…香奈枝が、俺のクラスに来たんです」
「そうだったの」
「それで色々話したんですけど、何か変だなって思って」
「話したの?」
「はい。香奈枝が話しかけてくれて…」
「香奈枝から?」
「でも、会ったことないって言われちゃったんで…」
「そうだったの…。ねぇ、翔太君?」
「はい?」
「これからも香奈枝をよろしくお願いできる?」

そんなの言われなくても、せっかくまた出会えたんだ。
もう、香奈枝を離さない。
離したくなんか…ない。