「は?!信じらんない!!
人の男とるとかマジありえないんだけどっ」




教室で、そんな言葉を吐く沙雪が注目を浴びていた。




「えっ沙雪、彼氏と別れたの??」


「ううん。あたしじゃなくてー、何かリカがさぁマユに彼氏とられたらしくて。」


「えー最悪じゃん。リカ大丈夫?」


「…んー…大丈夫くはない……。」




沙雪はまた泣き出しそうになったリカの頭をポンと撫でた。




「マユの奴、絶対許さない。」




震え声で言ったリカの言葉。


沙雪たちは聞き逃さなかった。




「潰しちゃう?」




沙雪の台詞はまるで、ドラマか映画を見ているようだった。


その場にいたクラスの女子の半分、11人全員がうなずいた。









――立野沙雪――




高校2年生


彼氏・友達、共に不自由なし。


容姿もけして悪くない。


クラスのリーダー的存在の美少女だった。


綺麗な容姿に比べて、性格はいいとはお世辞にもいえない。




「大体さぁ、あいつは自分こと可愛がりすぎなんだよね。」


「思った。中学のときさ、初めて告られたとき一週間ぐらい騒いでたよね?」


「あ~、あった、あった。マジうざかったし!!!」


「調子乗んなってカンジだった。」


「女子も男子も結構ひいてたよね。」




帰り道、そしてカラオケに行ってからもマユの悪口は続いた。


――マユは沙雪と小学校から一緒だった。


でも、特に仲がよかったわけでもない。


むしろ嫌っていた。


小学校の頃から派手だった沙雪に比べてマユは地味で大人しかった。


それが、中学からは一変。


マユは、高校デビューならぬ、中学デビューを果たしたのだった。


中学では2人とも派手なグループにいたので仕方なしに仲良くしていた。


高校ではクラスも離れてほとんど話していない。