俺はプラスチックの簡素な下駄箱から、100円ショップで購入したビーチサンダルを取り出した。ちょうど1年前、こちらに遊びに来た友人と海にでも行くかと盛り上がって買ったものだ。
フリーサイズのそのサンダルは、男の俺には小さくて踵が溢れてしまった。目の前の足には少しばかり大きいだろうが、裸足で歩くよりましだろう。
足元にサンダルを添えてやると、女は不思議そうに首を傾げる。
「とりあえず、飯でも食いに行こう」
こうして俺は、数分前の自分をあっさり裏切った。
散々怒鳴った挙げ句の誘い文句はなかなか恥ずかしいものがあったが、彼女は弾けるように笑った。
家から10分ほど歩いたところにあるラーメン屋に向かって、彼女とふたり並んで歩く。
名前を知らないのはコミュニケーションを取るうえで不便なので、彼女に尋ねてみたのだが、彼女は「セミです」としか答えなかった。
この女、結構強情だ。
例え彼女がセミだったとして、そのままセミと呼ぶのは俺が他の誰かから人間と呼ばれるのと同じだ。
何度聞いても同じ解答であることは目に見えていたので、仕方なく俺は彼女を「ミー子」と呼ぶことにした。
フリーサイズのそのサンダルは、男の俺には小さくて踵が溢れてしまった。目の前の足には少しばかり大きいだろうが、裸足で歩くよりましだろう。
足元にサンダルを添えてやると、女は不思議そうに首を傾げる。
「とりあえず、飯でも食いに行こう」
こうして俺は、数分前の自分をあっさり裏切った。
散々怒鳴った挙げ句の誘い文句はなかなか恥ずかしいものがあったが、彼女は弾けるように笑った。
家から10分ほど歩いたところにあるラーメン屋に向かって、彼女とふたり並んで歩く。
名前を知らないのはコミュニケーションを取るうえで不便なので、彼女に尋ねてみたのだが、彼女は「セミです」としか答えなかった。
この女、結構強情だ。
例え彼女がセミだったとして、そのままセミと呼ぶのは俺が他の誰かから人間と呼ばれるのと同じだ。
何度聞いても同じ解答であることは目に見えていたので、仕方なく俺は彼女を「ミー子」と呼ぶことにした。



