「……そのセミが、俺になんの御用ですか」
力ない言葉にも、女は嬉しそうに顔を綻ばせる。かと思えばきゅっと表情を引き締め、背筋を伸ばしてまっすぐに俺を見つめた。
「昨夜地面に落ちてしまったわたくしをあなた様が木に戻してくださったおかげで、わたくしは無事大人になることができました。わたくしは決めたのです。あなた様を見つけ出し、お側であなた様をお助けすると」
言い切って満足そうに鼻息を漏らす女に俺は今度こそ絶句した。
お側に? お助けする?
こいつはちょっとした気まぐれで俺の部屋に舞い込んだわけではないのか。俺に付きまとい、これから俺の部屋に居座ると?
背筋が再び凍りつく。逆鱗がどうなんて、笑顔に悪意がないなんて考えている場合じゃない。一刻も早くこの女を部屋から追い出さなくては。こいつは間違いなく危険な変質者だ。
シンプルなワンピースに凶器を隠しているような気配はない。瞬時に俺は決断し、女の手首を掴んで勢いよく引っ張った。
「きゃっ!」
急に腕を取られバランスを崩した女は危うくベッドから落ちそうになり、片手を突いてなんとか立て直したもののしたたかに膝を打ち付けた。じわりと罪悪感が沸き上がるが下手な同情は危険だと慌てて気を引き締める。
力ない言葉にも、女は嬉しそうに顔を綻ばせる。かと思えばきゅっと表情を引き締め、背筋を伸ばしてまっすぐに俺を見つめた。
「昨夜地面に落ちてしまったわたくしをあなた様が木に戻してくださったおかげで、わたくしは無事大人になることができました。わたくしは決めたのです。あなた様を見つけ出し、お側であなた様をお助けすると」
言い切って満足そうに鼻息を漏らす女に俺は今度こそ絶句した。
お側に? お助けする?
こいつはちょっとした気まぐれで俺の部屋に舞い込んだわけではないのか。俺に付きまとい、これから俺の部屋に居座ると?
背筋が再び凍りつく。逆鱗がどうなんて、笑顔に悪意がないなんて考えている場合じゃない。一刻も早くこの女を部屋から追い出さなくては。こいつは間違いなく危険な変質者だ。
シンプルなワンピースに凶器を隠しているような気配はない。瞬時に俺は決断し、女の手首を掴んで勢いよく引っ張った。
「きゃっ!」
急に腕を取られバランスを崩した女は危うくベッドから落ちそうになり、片手を突いてなんとか立て直したもののしたたかに膝を打ち付けた。じわりと罪悪感が沸き上がるが下手な同情は危険だと慌てて気を引き締める。



