不安だったのだろうか。
 家族もなく、世間を知らぬままひとりで飛び出した街。セミを助けた俺のなかに、なにかミー子を安心させる要素を見つけたのだろうか。
 ひんやりとした甘さを飲み込みながら俺は二度瞬きした。
「なんでもするから側に置いてってミー子は言ったけど、もし俺がとんでもない危ない奴だったら、ミー子はどうするつもりだったの」
 静かに吐いた言葉にミー子が顔を上げる。
 まっすぐな瞳で俺を見つめたまま、ミー子は強く首を振った。
「良隆さんは良いひとです」
 揺らがない視線。強い眼差し。
 その両目は俺を疑うことなどひとつも考えていなかった。
 ぽたり。アイスクリームが白い汗を落として、ミー子は慌てて右手を持ち上げた。これ以上こぼさないようにと溶けた部分を中心に舐めとる。
 熱心にアイスクリームと格闘する横顔を見ていたら、俺は途端にすべてが馬鹿らしくなった。
 ミー子が刃物を持っていないか咄嗟に確認した自分。
 危険な変質者だと怯えた自分。
 同じように滴り落ちそうな白を吸い上げて、土曜の午後を迎えた公園を眺める。