龍司は、

『また来るから、開けろよ。お前んちはもう覚えたから』

と言い残し、すんなり今度は玄関から、出ていった。


あたしはそのまま、放心状態で、天井を見上げていた。



涙は出なかった。



真由美にも電話はしなかった。



何時間経っただろう。



真由美の

『ただいまぁ〜』

と言う声に、ハッとした。


気付くと、外は明るくなり、夜が明けていた。



『おかえり!』



明るく言った。



別に悲しみをこらえて、
とかそんなんじゃない。



初めては好きな人と、なんて、

中学のときにとっくに壊れてるし、

好きな人なんていないし、
もう別に処女じゃないんだし、



別にたいしたことじゃない。



『…ごめん、こんなに遅くなるつもりじゃなかったんだけどさ、

帰りたくても帰れなくて…』



真由美が申し訳わけなさそうにおずおずと口を開く。