『お前、愛想ねーなぁ』


もう一人の男が口を開いた。


こっちの男のほうがもっとヤバそう。



見ると、ガムを噛みながら、無表情であたしの方を見てる。



(なんだょ。お前こそ、愛想ねーじゃんか)



ムッとして見返す。




『黙ってねーで、なんか言えよ』



さらに言われた。



(ムカつくやつ!)




『別にしゃべることないし。

それから、初めて逢ったやつに、お前っていわれたくないんだけど』



あたしはとっさに口にしていた。



そのとたん、そいつは一瞬ものすごく怖い顔した。



――殴られる!?って思った瞬間、

頭をぽんっと叩かれた。



『お前変わってんな。

お前みたいなの嫌いじゃねーけどよ』



えっ?と思った瞬間、



―――グイっ



引き寄せられ、キスをされた。



一瞬の出来事。




お酒に混じって何か塗料のような、匂いがした。




真由美たちはなんだか盛り上がってて気付いていなかった。



ハッと我に返り、


『なにすんだよ!』


睨み付けると、

男はそれには答えず、言った。



『俺、龍司。お前、名前は?』



『はぁ?話、変えんなよ!』



『じゃ、お前でいいな、番号教えろよ』



ほんっとムカつく奴!!!


なんでこんな偉そうなんだこいつ?



『真由美ー!!もう行こう!!』



あたしは真由美の腕を掴むと、歩きだした。



『えっえっ?どうしたのぉ?カラオケはぁ?』



『いいから!』



気にせずどんどん歩く。



真由美は後ろを振り向きながら『ごめんね』と謝っている。



『謝る必要ないよ!』



とにかく無性に腹がたって、一瞬でも行こうと思ったことに後悔した。