《天》
あいつ…
本当に陸上部入るかな…。
なにがなんでもあいつに入ってほしいから母さんの形見のネックレス渡しちまったし…。
もしあいつが入らなかったらぜってぇネックレス帰ってこねぇよな…。
俺ってつくづくバカだ。
てか疾風は何がしたかったんだ?
俺のため?
それともまじであの子を心配して?
…いや、疾風が人の心配をする訳がない。
だから、多分俺のため。
あいつしか分からないからな。
俺のこと。
女なんて皆、俺の外見だけで近寄ってくる。
何も知らない癖に、何が、『付き合いたい』だ。
ろくに子育てもせずに毎日遊んでばっかで、毎日必死に働いて、身体を壊した母さんを病院にもつれてかなかった、母さんを殺したに等しい親父。
大好きだった母さんを殺した親父を俺はぜってぇ許さない。
だけど親父の血を濃く受け継いだのが俺だった。
しかし親戚や、親父の知り合いは、皆俺の兄貴より俺のほうが似ていると言う。
俺は親父と似ている…というか、親父の血を受け継いだというのが自分の中で許せなかった。
多分それは、母さんを殺したと俺が思って、身体全体で親父を拒否しているからだろうと思うが。

