宛て名のないX'mas

―…

「あ、いた!裕美!こんなとこにいたのかよ!」


やっとのことで亮太が裕美を見つけたのは、この前ケンカしたあの公園の噴水の所だった。

裕美は亮太の姿を見つけると、ふにゃ~っと笑った。


「ふえー?あ、亮太~」

「…お前、酔ってる?」

「ウイスキーボンボン食べた」

「バカか、お前…」



裕美は店の外で売られていたチョコレートを買って、やけ食いしながらここまで来たらしい。

亮太は呆れたようにため息をついて、裕美の隣に座った。



すると裕美は、亮太のことをポカポカと叩いた。



「調子に乗んな!バカ!ガキ!孝志先輩とのデート台無しにして!」

「だから、ごめんって!」



亮太は鼻を掻いて口を尖らせた。

裕美は、しばらく叩いてから、ふうっと後ろに手をつき、空を仰いだ。



「まあ、いいけどね。孝志先輩は、一緒にいるだけで疲れちゃって、何かやっぱり合わないかなぁなんて」


裕美が「かなぁなんて」を言いながら、首を傾かせて亮太を見た。



亮太は鼻をすすってから、「そーすか」と言った。

裕美は腕をさすりながら、「うん」と答えた。



しばらく沈黙が続いたが、裕美の「はあ~」というため息でそれは壊された。


「あーあ。でもこれで、今年もロマンチックなクリスマス逃したなぁ…(でも、亮太が迎えに来てくれたし、まぁいいか)」



裕美は少しとニヤけて、また亮太を見た。

すると亮太はふいっと目をそらし、あさっての方向を向いた。



「…(今何で目そらした?!)」

「…(やべぇ、まともに顔見れない…はあ。俺、チキン)」