……ただ、この二人にロマンチックな雰囲気など作り出せるわけがなかった。
「……」
「……」
「…(思わず連れ出しちゃったけど、この後の展開までは考えてなかった…)」
「…(まさか、亮太が連れ出してくれるなんて)」
「…(やべぇ、どーっすっかなぁ…)」
「…(ちょっとドラマみたい)」
「…(タスケテー(泣))」
亮太は裕美に表情が見えないのをいいことに、一人で百面相した。
かなりパニくっている。
裕美は亮太の背中がすごく愛しくなって、しばらく見つめていたが、しばらくして、首を傾げた。
「(長いな…。いつまで黙ってんだろ?)」
「(そろそろ何か喋らないとまずい…)あ、あ~!」
裕美は亮太が指差す方を向いた。
亮太は苦し紛れに、道で風船をくばっているサンタクロースを見つけ、「本物みてぇだなっ」とか、「風船もらう?」とか、妙にハイテンションで喋りまくった。
裕美はすっかりいつもの自分を取り戻して呟いた。
「はぁ。孝志先輩に後で謝らなくちゃ」
その一言で、亮太は一気に自身喪失。
自分でしたことが裏目に出ていたのかもしれないと不安に襲われた。
裕美は、おかまいなしに続ける。
「ねえ、何であたしのこと、連れ出したの?」
「えっ?(マジかよ…。空気で読んでくれ~!)」
「ねえってば(本人の口から聞きたいんだもん!)」
二人は駅に着き、改札を通り、ホームへ。
この直後、亮太は言ってしまったのだ。
苦し紛れとは言えあの禁断の言葉を。

