宛て名のないX'mas


「裕美ちゃん!」と孝志が駆け寄ってきた。


裕美はぱっと上を向く。


「たく、危なっかしいな」


裕美の少し潤んだ瞳。

孝志は愛しそうに裕美を見て、手を引っ張って立ち上がらせ、そのまま手を握って歩き出した。


「せ、先輩?」

裕美の心臓は張り裂けそうなほど、ドクンドクンと鳴っていた。


「観覧車乗ろう。一番てっぺんで願い事すると、その願いが叶うんだって」



裕美はハッとした。森田が言っていた話だ。

一番大好きな人と、願い事をすると…。



(……一番大好きな人…?)



「俺、大事な話があるって言ったじゃん。あれ、今話す」


孝志は観覧車の列に並び、手をぎゅっと握り、真剣な表情で言った。



「俺、裕美ちゃんのこと好きだから。付き合って欲しい」



裕美は、その言葉を聞いて動けなくなった。