宛て名のないX'mas


「…あんたに何が分かんの!あたしは孝志先輩が好きなの。本当に好きなの!知ったようなこと言わないでよ!」


裕美はハッとした。

亮太は、寂しそうな顔をした。


(亮太…)


そして、亮太は微かに笑って、小さく呟いた。


「…そうだな」


(どうして素直になれないの?何がしたいの?何を伝えたいの?本当は。本当は)


「ごめん」



亮太は寂しそうに呟いて、背を向けた。

そして、自転車にまたがった。


そして、帰り際に「風邪、ひくなよ」と言って、走り去っていってしまった。



裕美はその場で立ち尽くした。

(最低だ、あたし…)


裕美はまたじわじわと哀しくなって、涙を流した。


「うー…」


謝らなきゃいけないのは自分。

自分が分からない。


マフラーの宛名は、誰?


涙で前が見えない。


苦しくて、真っ白で。