裕美はしばらく部屋でぼんやりとして過ごした。
下からは、お客さんの声がちらほら聞こえだした。
考え込んでもしかたない、と思ってマフラーを編むことにした。
(何でもいつかは変わっていってしまうんだなぁ。二人暮らしも、なかなか好きだったけど。お母さんには、大好きな人がいる。
年なんて、関係ないんだなぁ。いくつになっても、恋に酔ってしまうものなんだ。)
裕美は少女のように頬を染めた母の姿を思い出して、何だかやるせなくて、ただひたすら手を動かしていた。
何時間経っただろう?
ストーブで温まった部屋だからか、途中で寝たような気もする。
裕美はマフラーを見つめて、すくっと立ち上がり、コートを羽織った。
―…
裕美は町をとぼとぼと歩き彷徨っていた。
木枯らしが吹き、耳が痛いくらいに冷え込んでいた。
裕美は寂しい気持ちに支配されて、十二月の寒さのせいもあって、ものすごく切なかった。
今、一人でいたら、乾いた冬の空に吸い込まれてしまいそうだった。
(何だよ、敏子のバカ)
裕美は一人立ち止まって、空を仰いだ。
(何でこんなに寂しいの)
こんな時は、大好きな人の温かい温もりが欲しい。
誰か傍にいて欲しい。
裕美は孝志のメールを思い出した。
その時、後ろからベルの音が聞こえた。
チリン、チリン。
(サンタさん…?)
裕美は振り返った。