「あの言葉は

 忘れてください」

凪子の話す声をドアの外で
聞いている柊雨と司。

「私の気持ちに答えて
 この私を好きだと言った
 
 君の今の本当の思いは
 どうなるの?」

「この思いは
 心の深い海に沈めました
   
 私はもう誰も好きになりません
 誰も悲しませたくない
   
 シュウさんを傷つけてまで
 あなたの手をとったとして
 もしも、過去の記憶を
 取り戻してしまったら
 今度はあなたの記憶を
 失うかもしれない
   
 そしたら今度は
 あなたを傷つけてしまう
   
 誰かを傷つけてまで
 自分の幸せを守りたいとは
 思いません」

その言葉は紫季の胸に重く響く