彼の声は、私の張りつめた心を
解き放してくれる。
 
それが、診療の為に必要な言葉
だったとしても。
 
診察の最後に、紫季先生から
記憶障害の状態がもう少し
詳しく分かるまでの間
退院が延びた事を聞かされた
私の気分は、滅入る。

でも、毎日、紫季先生に逢える

私は、入院生活をそれなりに
楽しく過ごしていた。
 
それから幾日が立ち

ロックバンド『ジニア』
海外ツアーの最終日。

「THANK YOU

 ありがとう」

ライブは大歓声の中
幕を閉じる。
 
ステージ裏の楽屋前には
たくさんの関係者の人達が
集まり、海外ツアーの成功を
讃えてくれている。
 
「Congratulations!」

「おめでとう」