紫季は、繭子に昔の記憶と
引き換えに

今の記憶を無くす事に
なるかもしれない事を告げる。

「彼女が以前の記憶を取り戻し
 シュウさんを選んだ時は
 私は、黙って
 医者である事を告げ
 身を引く覚悟はできています
   
 なぎちゃんを
 苦しめたくはないのです」

凪子の苦しみを、今一番に
理解しているのは、誰でもない
紫季なのだ。 
  
その紫季が放つ言葉に、嘘は
微塵(みじん)も感じない。

ここに居る誰もが、凪子の事を
思っている。

「そんな・・・」

繭子は複雑な気持ちだった。