しばらく経ち、クリティアは己の寝床へと戻ってきた。

その口にはまだ生暖かさの残る鹿をくわえている。



『おかえり、クリティア』


スーは慣れた手つきでそれを受け取り丁寧に切り分ける。



《お前も慣れたものだな》


『そりゃ何年もやってるからね』



人が生肉を食べるわけはなく、狼が焼いた肉を食べるわけもない。

必然的に人であり自由に手の使えるスーが自分の食べるものの調理をすることになるのだ。


スーは切り分けたそれを焼き朝食…いや昼食の用意をする。


クリティアが出掛けている間に作ったご飯やサラダを出来上がった肉と一緒に机に並べる。



『いただきます』


《…そういやあ表の畑に植えた野菜がそろそろ収穫の時期だな。さっき実がなっていたぞ》


『もうそんな時期?じゃあ食べたら収穫に行ってくるわ』



人里とは離れた生活をしているため、当然自給自足の生活だ。

スーはそれを苦に感じてはいないし、それを当たり前とすら思っている。