深い深い森の奥。
一匹の狼と一人の少女が暮らしていた。




《スー。起きろ、スー》


狼が己に寄り添って眠っている少女に声をかける。


『……んー?』


彼女、スーはうっすらと目を開ける。そして狼の姿を見て、再び目を瞑る。



《おい、もう昼だぞ。俺は腹が減ったんだ。さっさとどいてくれ》


その言葉にスーはゆっくりと起き上がる。そしてまだ眠そうに目を擦る。



『…おはよ、クリティア』


《おはよう、スー。俺はこれから狩りに出掛ける。留守番頼むな》



クリティアと呼ばれた狼はスーが己から離れたのを確認すると、それだけを告げ出ていく。



『行ってらっしゃい』


その背を見送ってスーが動き出す。これがこの二人の一日の始まりだ。




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