記憶のない海

あいにく『僕』は短命で人生を終らせた。

『あたし』は、『僕』よりすでに長生きしていた。

これからも生きていかなきゃね──…


これから先は
今までのように虚無感に襲われて

死にたいと思う事もないだろう。

生きている意味すらわからずに自らを…自分を否定して生きていく事もないだろう。


生まれた意味を知ったから


『僕』はね、
もっと長生きしたかったから、また転生したんだ。

たくさんの物を見て
記憶が降り積もるように



『僕』は『あたし』になっても


記憶のない海を漂う。





それでも無駄なものなんか一つもない


見落としていいものなんか一つもない




いつか辿り着く───




自分のルーツに。