二月の深夜の大気は冷えきって冴えわたり、吐く息は白い粒子となって澄んだ闇に溶けていく。

眠るのを半ば諦めた俺は、スエットの上下にサンダル履きのまま表に出た。コーヒーを買いに、アパートの駐車場の入口にある自動販売機に向かう。販売機からホットコーヒーを取り出し、楕円形の青いお月さまに手をかざして乾杯した。温かい塊が、喉から食道を下り、腹から体中に広がっていく。まだ温もりの残った空缶を捨てて、ふと駐車場に目をやると、真ん中の通路を 境に、右に二台、左 に一台停めてある。
免許のない俺は入居以来、駐車場にはほとんど入ったことは無かった。
気まぐれに駐車場に入ってみることにした。右回りにゆっくりと、並んで停めてあるワゴンと乗用車の前を歩き、突き当たりの金網のフェンスでUターンして、反対の乗用車の前を通り、中央の通路に戻ったその時、スニーカーの靴底に違和感を感じた。