用を足して今度こそ楽屋に戻ろうとすると、後ろから誰かに呼ばれた。 女の声で。 振り返ると、そこにいたのは同じ事務所の咲(サキ)だった。 咲は、そのまんま本名の咲って名前で活動してて、歌手。 「久しぶりだね。」 そんでもって俺の元カノ。 「だな。元気?」 「うん、可威は?」 「まぁまぁ。」 正直、あまり会いたくない相手。 会って話すこともないし、一緒にいて嬉しい気分になることがない。 「変わんないね。」 「何が?」 「可威、いっつもまぁまぁって言う。」 「そうか?」