次の日。
優衣はやっぱり熱を出した。
「病院行くぞ」
「えぇぇ...」
38度の熱がありながらもダダをこねる優衣。
「行かなきゃ治らないし、仕事もできねーよ?」
「わかった...」
着替えを済ませ、保険証を持って家を出た。





初めての記念日を迎えた次の日だった。
人生でこんなにも混乱した日があっただろうか。
今でも信じられない、信じたくない現実が目の前にあるんだ。
君がなぜ笑ってられるのか俺にはわからなかった。
無理してる優衣に気付けなかった。
あの日の俺の涙が君を傷つけたのだろうか。





「あたし病院って苦手だなー」
「知ってるよ。」
そう言って優衣の手を握った。
嬉しそうに笑って握り返してきたあの小さくてあったかい手。
今もあの手はあったかくて...もうすぐ君が居なくなるなんて考えられないよ。






「香川さんー」
「はいっ」
血液検査から約30分。
やっと名前を呼ばれた優衣。
どこか悪いのかな...なんて不安は優衣の笑顔で吹っ飛んだ。





優衣が呼ばれて20分。
いまだに病室から出てこない優衣。
何かあったのか...?
「涼...あたし詳しい検査しなくちゃいけないみたい」
「へ...?何で?」
「なんか血液の成分が何とかで...とりあえず4階にいかなきゃなの」
優衣はへへって笑ったけど、あの時の俺は作り笑いを見せる余裕さえなかったんだ。